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公益財団法人日本ナショナルトラスト
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パイロット事業

地域の実情に即した支援事業を構築し、JNTの可能性を高めるために、先行して事業を実施しました。
2015年度から始めたパイロット事業をご紹介します。

茅文化を未来へ紡ぐ
「われらが紡ぐ
白川郷かややねプロジェクト~秋の一斉茅刈り~」

岐阜県大野郡白川村では、村内で合掌造民家の屋根材となる茅の循環を促し、自給率を向上させる取り組みを行っています。
茅の自給に欠かせないのが刈り手の確保です。
そこで、白川村と役割分担しながら、JNTが他地域の一般参加者を募り、茅刈りをイベント形式で行うプロジェクトを協働で立ち上げました。
(正式名称「われらが紡ぐ白川郷かややねプロジェクト~秋の一斉茅刈り~」)
一般参加者には、茅刈りを通して村の文化に関心を持ち、できれば継続して関わってほしい。そのような想いから、JNTでは東京を拠点に茅刈りイベントの企画をする「かややね会議」というネットワークを設定しました。
かややね会議では、これまでメンバーそれぞれの視点を活かした企画作りを行ってきました。白川村と協働でイベントを実施することで、一般参加者だけでなく、白川村民の茅文化に対する関心が高まっています。

われらが紡ぐ 白川郷かややねプロジェクト~秋の一斉茅刈り~ 概要

地域
岐阜県大野郡白川村(世界遺産)
連携先
白川郷荻町集落の自然環境を守る会、白川村教育委員会、白川村役場、(一社)世界遺産白川郷合掌造り保存財団  等
JNTの役割
白川村とかややね会議をつなぐコーディネーター
(かややね会議の運営、企画の実現に向けた白川村との調整、外部への協力依頼  等)
成果
  • 白川村に関心のある人々が、それぞれの経験や知見を活かし参加することで、多様な企画が生まれ、白川村や茅文化の新たな魅力発掘につながりました。
  • 白川村内外の人がともに茅文化に触れる機会を作ることで、白川村の茅刈りの技術継承となり、合掌造民家や茅文化への意識醸成にも繋がりました。
今後の取り組み
当初の目的である「茅の自給率向上」から、更に広い視野に立った「白川村の環境保全」を目指し、プロジェクトを続けています。
かややねプロジェクト詳細
年間スケジュール

かややねプロジェクトでは、1年間を通して活動を行っています。ある年の年間スケジュールはこちらです。

4月
10月

かややね会議

茅文化体験プログラム企画検討

参加者同士で普段の活動や関心をベースに、企画案を出し合います。

企画決定

白川村の方から地域の状況を伺い、意見交換を通して、企画を決定します。

企画詳細づくり

より良い企画にするため、時には企画案を実際に試し、企画の詳細を作ります。

茅文化に関するイベント

交流や学びの機会を通して、白川村の茅文化への関心を高めます。

11月

茅刈りイベント

1日目 茅刈り

2日目 茅文化体験プログラム

1月

かややね会議

茅刈りイベント報告会

茅刈りイベント参加者の再会の場。新たな関心を持つ人も参加しやすい内容です。

取り組み事例①かややね会議

茅刈りイベントの企画作りを行う場、かややね会議。
白川村や茅文化に関心のある多彩なメンバーが顔を出してくれます。建築、演劇、自然、商業、社会活動など、それぞれのフィールドを活かして意見交換や交流を行います。白川村や茅文化に対する参加者の新たな視点を活かし、白川村の茅文化の魅力を語り、多くの人に伝える機会を生み出してきました。
当初、首都圏の若者が中心となって集まっていたかややね会議でしたが、次第に白川村の若手も参加するようになりました。茅文化体験プログラムの企画作りだけではなく、オンライン企画「『良い茅とは何か』を知る座談会」など、地元の方の協力があるからこそ実施できる企画も増えていきました。
企画の幅が広がることで、かややねプロジェクトの関心層、参加者層が拡大しました。

取り組み事例②
茅刈りイベント1日目 茅刈り

毎年11月に、全国から参加者を募って行う茅刈りイベント。
白川村民と一般参加者(例年約60名)が参加し、白川村の方が参加者に刈り方を教える形で茅刈りを行いました。茅刈り後に行う交流会は、村内外の参加者がじっくり語り合える機会です。毎年交流会を楽しみに茅刈りに参加する方もおり、再会を喜ぶ声も聞こえます。茅刈りのイベント化は、村外の参加者にとってはもちろん、白川村の人にとってもあらためて茅文化に触れる機会となりました。村内外の人々の交流が、茅を手で刈る文化や技術への関心を高め、茅文化の継承に繋がっています。

イベント参加者の声
  • 自分の刈ったものが白川郷の屋根になり、風景の一部となると思うと疲れもふっとびます。
  • 伝統の一部に参加出来て、その大変さや重要さを自分の身をもって感じることができた。
  • 大勢の人で刈る時間が楽しかった
  • 体験を通し、白川郷への理解と愛着が深まりました。
  • 皆で茅を一緒に刈って、達成感、一体感を感じた。
取り組み事例③
茅刈りイベント2日目 茅文化体験プログラム

白川村や茅文化をより深く知るための茅文化体験プログラム。
ある年には、「白川村の昔の茅文化を知りたい」という思いから、かややね会議メンバーのアイディアで「ミニ茅ニュウ」をつくるイベントを開催しました。今では作られなくなった茅ニュウ(伝統的な茅の保管方法)のミニ版をつくる、初めての試みとなりました。
また、「人の生活を感じられる取り組みで、白川村の自然環境に触れたい」というかややね会議メンバーの思いから、「オダレ作り」を実施した年もありました。雪深い白川郷で、積雪から合掌造民家を守るための雪囲い「オダレ」。白川郷に自生する茅の一種「オギ」を有効活用し、オダレ作りを行いました。
茅刈りと茅文化体験プログラムを合わせて実施することで、参加者は白川村の茅文化や暮らしをより多角的に理解し、関心を深めることに繋がりました。

関係者の声

白川村役場
松本 継太 さん

かややね会議では、都市で生活する若者ならではの斬新な発想が生まれ、大変ユニークな茅刈りイベントになってきています。特に日々村で生活している我々ではなかなか分からない、都市で生活する人々のニーズも知ることができ、今の関係性を継続することで取り組みも成熟していくと思います。さらに村にとっても、イベントを通して茅文化の重要性を再認識し、新しい価値感を共有できる良い機会となっています。「わざわざ全国から茅刈りに来ていただいているんだから、地元も頑張ろう」という一体感も生まれています。今後は、茅刈りイベントを継続し村に定着させることが大事だと思います。JNTには末永いお付き合いを期待しています。

そのほかのプロジェクト

パイロット事業から支援事業へ

これまでJNTでは、地域の課題やニーズなどを踏まえ、活動団体や協力者とともにパイロット事業を行いました。
パイロット事業を経て、支援事業を実施しています。

支援事業は次のように地域遺産に
寄与しています

  • 地域の状況に応じたきめ細やかなサポート 地域の状況変化に対応し、複数年度に渡るきめ細やかなサポートが受けられます。
  • JNTが持つ資源の活用 JNTが関係する企業や他の中間支援組織、信頼性のある専門家などの人材ストック、JNTが持つ地域遺産保全のノウハウを活用できます。
  • 地域に生まれる具体的な変化 地域が抱える課題を分解し、具体策を明確にし実行することで地域に変化が生まれます。この変化を契機に、まちづくりを次のステップへと進めることができます。
支援事業の詳細